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妊娠

妊娠体験記録7 妊婦だからと言って「妊娠」が毎日のすべてではない

妊娠中の人が何に関心を持っているか——自分が妊娠してみるまでそれは分からなかった。

というより、子育て本を読んで知識を蓄えたり、赤ちゃんグッズを揃えたり、生まれてくる子のための衣類を手作りしたり、栄養を考えた食事を摂ったり、マタニティ体操をしたり……生まれてくる子のことを中心に考える生活を送るものなんじゃないかと想像していた。

いざ、なってみてどうかと言うと、それは一部そうであるが、それ以外はそうではない。私の日々の関心は、案外目の前のことにある。今日はご飯何をつくろうとか、冷蔵庫にあれがなくなったから買いに行かないととか、TVやネットのニュース見て「そうやそうや」と思ったり「はあ!?何言っとんねん」と思ったり「しょーもな」と思ったりとか、好きな漫画が出たからamazonでポチるとか、庭のしだれ桜や近所の花の様子を確認するとか、庭に来る野良猫とコミュニケーションを取るとか、電力自由化でどこの会社にしようとか、携帯を格安SIMに変えようとか、お風呂場に発生する小バエを撃退したいとか、旬の内に食べられるだけ苺を食べておきたいとか、そういうことが一日の大半を占めている。

妊婦らしい活動と言えば、栄養バランスを考えてご飯をつくること、2日に1回ペースでの30回×3セットのスクワット、在宅仕事をする夫にも必要な運動と思う散歩を毎日一緒にすること、妊娠線予防のために毎日お腹にオイルを塗ること、そのときたまたま関心を持った子育て本をときどき入手して読むこと、といったところか。赤ちゃんグッズはそれなりに揃えて、そのまま置きっぱなしにしてある。毎日お腹の中で動き回る胎児の存在は感じながらも、そのことを中心に毎日を送っているわけでもない。

というのも、私の場合は妊娠期間と新婚期間が並走しているからだ。妊婦でもあるが、新婚妻でもあるので、妊娠の事実だけに集中することができない。結婚生活がまだ始まったばかりなので、妊娠生活以前に新婚生活が新鮮だし、2人だけで過ごせる期間にタイムリミットがあることが分かっているから、マイペースで何気ない2人の日常生活が貴重なのだ。のんびりしているうちに日が暮れていく似たような毎日は、子どもが生まれた瞬間からなくなってしまうものなのだ。だから今は、夫と過ごす時間を大事にする。2人で自分たちの生活を創りあげることに時間を注ぐ。赤ちゃんに関することは生まれてからでもできることだから。

ひとくくりに妊婦と言っても、その人が置かれている状況によって関心事はそれぞれなんだということを、自分の体験を通して初めて知った。ずっと妊娠を待ち望んでいた人はお腹の中の子のことばかりを考えながら過ごすだろうし、絶対に今の仕事を手放したくないと思っている人はやれるだけの仕事をやり切ることを第一に考えるだろうし、自由に遊べなくなることを惜しむ人は今のうちに遊べるだけ遊ぶことに集中するだろうし。私は、生むまでにライフワークとか仕事とかをやれるだけやろうとするだろうというイメージが自分ではあった。生まれたらなかなかできなくなるかもしれないから、何かまとまった書き物を書き切る、一作品として仕上げる、そういう自分事にギリギリまで時間を遣う妊娠生活を送ると想像していた。けど、蓋を開けてみたら全然違った。それよりも夫との日常生活を築くことの方が大事だったみたいだ。自分のことは案外自分で分かっていない。実際そうなったときの行動がすべてを物語る。妊娠生活というのは、妊婦の数だけ色豊かにあるのだ。

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